我々は、「用・美・道」を公案※として、日々修行に励んでいます。
ここでは、数百年にわたる武士の歴史のなかで、先人が汲み上げた
日本武道の三要素「用・美・道」を、「刀とそれを扱う人」という観点から解説します。
※公案…禅宗で参禅者を悟りに導くために与える課題
刀における「用」とは、斬れるのか、斬れないのかということに尽きます。
戦闘において、切れる刀は有用であり、切れない刀は無用です。
斬れ味が高いものほど「用」の質が高いと言えます。
斬れ味を高めるためには、余分な不純物を出し、刃の反りもより緻密にしなければなりません。用が高まった刀は、輝きが増し、形もより美しくなります。
「美」とは、用の追求、探求により無駄が削がれた「機能美」であるとともに、「殺人術」が「芸術」まで昇華した姿です。
用美兼ね備わる刀や武技を持っていても、抜く勇気、納める勇気、またはその心が備わっていなければ、用と美の力は発揮されません。
つまり、己を操作する「意志力」、己に打ち克つ「克己心」が、武道の求める「道」となります。